2008年12月25日
シリーズ「この人」足本裕子さん・「文化遺産を未来につなぐ森づくりの為の有識者会議」事務局長
(あしもと・ひろこ)
福岡生まれ、東京育ち。早稲田大学教育学部卒業後、都内の建築事務所に入社。1998年、任意団体「JUON(樹恩)NETWORK」設立に参画(出向)、初代事務局長に就任(現在、常任理事)。99年、同建築事務所退社。2002年、「文化遺産を未来につなぐ森づくりの為の有識者会議」設立、事務局長。
将来の文化財補修用材の確保を提唱
「日本の木の文化というのは、祈りのなかに育まれてきたものだと思う。木を伐るときに祈り、家を建てるときに祈り、1本1本を大事に使ってきた。それは木に対する畏れであり、また感謝の気持ちでもあった。だからこそ木を伐ることを自然から許されてきたのでは」
任意団体「文化遺産を未来につなぐ森づくりの為の有識者会議」(東京都)の事務局長として、森に大径木を残し、木造文化財を守る仕組みづくりに尽力している。
「有識者会議」は2002年、日本の豊かな森が育んだ貴重な木造文化財を修理・修繕するための補修用材の確保を目的に発足した。「現在、日本の木造文化財は明治時代に始まった解体修理が一巡、次のピークは200年後といわれている。だが、そのとき必要な年輪幅の狭い、200~300年生の桧や杉、松、栗、欅などが枯渇化しつつある」。そうした問題意識のもと、この分野の主だった方々に呼びかけ活動団体を立ち上げた。神社仏閣や古い町並みなど、木造の文化財建造物の修復に関する調査研究を主体に、政策提言や普及啓発活動を行っている。現在までに140人の個人と22の団体が入会。役員には文化功労者の伊藤延男氏や大野玄妙・法隆寺管長、有馬頼底・京都仏教会理事長(臨済宗相国寺派管長)、田中恆清・京都府神社庁長(石清水八幡宮宮司)のほか、哲学者の内山節・立教大学大学院教授や山本博一・東京大学大学院教授、古橋源六郎・(財)森とむらの会会長、速水亨・日本林業経営者協会会長らが名を連ねる。
幼少の頃、建築家の父親に連れられて各地のお寺を見て回り、仏像や陶器の見方を教わった。大学では古代史を専攻、奈良や京都の遺跡を訪ね歩き、元明天皇(奈良前期の女帝)に夢中になった。卒業後、結婚。子育てをしながら都内の建築事務所に就職。担当したプロジェクトで間伐材を調査するうちに「林業に関わる方々に心を奪われた」
1998年、全国大学生活協同組合連合会の呼びかけにより発足した任意団体「JUON(樹恩)NETWORK」(現在はNPO法人)に出向、設立に参画するなか、次第に環境保護活動に傾倒、文化財を守りたいとの思いも強くなり建築事務所を退職してフリーになった。
「日本の木と日本の伝統技術を結集して日本の文化財を守っていく仕組みを考えるネットワークの確立が求められている」
「有識者会議」は12月7日、京都市内でシンポジウムを開催、「『文化材』創造プロジェクト」の登録参加を呼びかけた。同プロジェクトは、超長伐期施業を目指している森林を「文化財の森」として登録を募り、現在樹齢80年生以上の杉や桧、松など、将来の文化財補修用材を確保していく制度だ。200年先をにらんだ森づくりとして注目され、全国から22カ所の森の申し込みがあった。目標は200カ所。
「樹齢200年以上もの森が日本のあちこちにある風景を想像するだけで楽しい。将来価値の創造、それは木に祈り、木に感謝することで見えてくる」
問い合わせ先=電話042―308―7227、ウェブサイト=http://www.bunkaisan.jp/、メール=info@bunkaisan.jp