2008年4月25日
【木材シンポジウム】変形しながらも耐える姿こそ木材の魅力、有識者らが語る
木材活用推進協議会(市川栄治会長)はこのほど、都内でシンポジウム「木を強くつかう」を開催。耐力壁日本一となった面格子壁の実用例を紹介した講演やパネルディスカッションが行われ、木材の性質に合った本来の使い方や建物に対する考え方など具体的な提言をまとめた。
講師には東京大学准教授で工学博士の稲山正弘氏、東京芸術大学教授で一級建築士の北川原温氏の両氏。建築情報システム研究所代表で建築評論家の馬場璋造氏が司会をつとめた。
テーマの「木を強くつかう」の実例は、稲山氏が開発した「地獄の面格子」の実用例を紹介。稲山氏の面格子は知る人ぞ知る「耐力壁ジャパンカップ」の第一回優勝作品でもある。「初期剛性は弱いが、圧力がかかればかかるほど木材がめり込み、挫屈や破壊などの現象を防ぐ」と稲山氏は特徴を説明する。
その面格子壁の実力に惚れ込んだのが北川原氏で、有名な名古屋万博の巨大建築物「海上の望楼」に採用した。「面格子を見たとき、変形しながらも支え続ける姿に生き物としての魅力を感じた」と北川原氏は話す。
両氏のプロジェクトに共通するのは「木を多く使うこと」だ。「木を生かすこと、山を生かすことは木をできるだけ使うこと」(北川原氏)、「木は生物的でしなり、粘り、受け流す。この本来の性質を生かすことが木の使い方」(稲山氏)と話した。が、現状では構造的に評価されない問題がある。「ある程度の変形を許容しても建物全体は壊れない証明に対する評価システムが求められる」(同氏)と具体的提案を示した。
また、いわゆる200年住宅について稲山氏は「長寿命はこれから研究していく課題」としたうえ「建物がひとに愛され100年でも200年でも使っていくという議論がなされていない」と指摘する。耐久性についても「D1樹種を使用し構造設計で腐らない環境をつくることが大切。そのためにメンテナンスは欠かせない」と話した。
参加者からは「メンテナンスしても腐って使えなくなれば交換する。そうして木材をたくさん使えばいい」(一級建築士)、「都市部の公共建築物に木材の使用例が少ない。ゆえにPRが足りない気がする」(建築科学生)などの声が聞かれ、木材への期待度の高さをうかがわせた。
解説
耐力壁(たいりょくへき)
風や地震などの負荷に抵抗する能力を持つ壁。木造では筋かいや構造用合板を用いるのが一般的で、所定量の設置が義務付けられている。姉歯事件に端を発する住宅耐震偽装事件以降、木造戸建て住宅でも耐力壁から算出する壁倍率を用いた壁量計算が注目されている。
耐力壁ジャパンカップ(たいりょくへきじゃぱんかっぷ)
正式には「木造耐力壁ジャパンカップ」。NPO法人「木の建築フォラム」木造耐力壁ジャパンカップ実行委員会主催。実物大の耐力壁どうしを油圧ジャッキで綱引きし対戦させるイベントで、どちらかが破壊されるまで勝負が繰り広げられる。これまで10回開催し、工務店、設計事務所、ハウスメーカー、大学、専門学校など幅広い参加者で行っている。