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2008年2月5日

シリーズ「この人」濵野忠彦さん・経済産業大臣賞を受賞した建築家:杉材の「網代」に見出した穏やかな陰影

はまの・ただひこ 1953年大阪府生まれ。1977年浜野デザイン事務所設立(現ハマノ・デザイン)。建築家。
はまの・ただひこ 1953年大阪府生まれ。1977年浜野デザイン事務所設立(現ハマノ・デザイン)。建築家。

「安心できる気配」を感じる網代
「安心できる気配」を感じる網代

「長寿社会を迎えた日本の住まいに、一つのプロトタイプになりうる提案をした」。研究者らにそう評された建築家がいる。

都内ホテルの授賞式会場。最高賞を受賞した主役が壇上にあがった。会場の熱気は頂点に達し、割れんばかりの拍手が鳴り響く。まばゆいカメラのフラッシュが、被写体にキアロスクーロ(陰影)を醸し出す。にもかかわらずそれは、なぜか穏やかでゆったりとした「気配」を感じさせていた。

36階に位置する超高層マンションにつくられたリフォーム実例「カイゴ・ハウス」が、コンテストで経済産業大臣賞を受賞した。施主は、70歳のご病気の主人がいる高齢者夫婦。「もっとも考慮しなければならないことは、介護される側と介護する側がどう暮らすかを計画すること」。

既存の間仕切り壁を取り払い、緩やかな曲面壁を採用して特色あるワンルーム空間を創出した。6×15杉材を芯に、「杉柾四ツ目網代」と「杉柾六ツ目網代」を双方からプレス製作した壁と建具が、インテリアの主たる構成材として斬新かつ穏やかな効果を上げ、夫婦が相互の「気配」を感じる空間を計画した。この「気配感」が空間全体を貫く大きなテーマとなっており、介護される側と介護する側双方が安心できる優れた住まいが実現した。

一方、一時的な遮断空間、あるいは気持ちを和らげる精神的空間として仏壇のある部屋を用意。他方、夫婦の実家の和室の天井に使われていた網代と欄間を再利用して「生活の記憶を残した」。

網代をとおして感じる気配。「なかなか言葉では伝えられなかった」というが、それは長寿社会における暮らし方の基本概念として記録され、「建築家・濵野忠彦自身」が醸し出す穏やかな気配感を前提として記憶されるのではないだろうか。